悟られないように
感づかれないように
自然に目元をこすって振り返った。
「あぁ‥えっと」
「あ、私は黒姫魅だよ」
「クロキ‥ミイル」
「黒い姫に魅入られるって書くの。名前負け‥だよね」
そう言って教えてくれた彼女の顔が曇る。
その時に思ったんだ。
あ、この子も、名前で辛い想いをしたことがあるんじゃないかって。
私と同じじゃないかって。
「ユズちゃんは、どんな字を書くの?」
少しおずおずと気まずそうに聞く彼女も、同じことを感じているのだろうか?
なんとなく、そんな気がしたんだ。
「サオトメは、5月の女。ユズは果実の柚に子供の子」
すると、彼女はその大きな瞳をぱちぱちさせて私の顔を見ていた。
「あ‥あの‥」
やっぱり、五月女の名前を出したから‥かな?
声をかけても反応がない。驚いてるのかな?
この子なら解ってくれるって、一瞬でも思った私が甘かった。
帰ろう。
この子に何かを言われたら、涙をこらえる自信がない。
真っ黒で真っ直ぐで
大きな瞳が全てを見透かしてしまう前に。
この場を立ち去ろう。
そう思って、足に動けって指令を出した時だった。
「可愛いねぇ!」
……え?
「柚子って、可愛い名前だねっ」
ニッコリと美しく笑いながら首を傾げる彼女は、私のことを、軽蔑や敬いや媚の瞳で見ていない。
「5月の女って書くんだぁ。私、5月生まれなんだよっ。おんなじだねっ」
それが、どんなに嬉しいことだったか。
「わわっどうしたの!? 泣かないでっ」
私は、ついにこらえることが出来なくて。
「ぅ‥うぅ。--っく、‥っく--‥
うわぁぁーん、うぁああぁん--っずび‥」
「わわっわっわ!」
差し出してくれた猫の絵のタオルハンカチを目に押し当てながら、小さな子供みたいに大声出して泣いた。
初めて人前で泣いて
初めて友達になりたいって思える人に逢えた。
この子なら‥
この子なら、
きっと、解ってくれる。
ねぇ、こんな私でも
友達が欲しいと望んで
良いですか‥?
感づかれないように
自然に目元をこすって振り返った。
「あぁ‥えっと」
「あ、私は黒姫魅だよ」
「クロキ‥ミイル」
「黒い姫に魅入られるって書くの。名前負け‥だよね」
そう言って教えてくれた彼女の顔が曇る。
その時に思ったんだ。
あ、この子も、名前で辛い想いをしたことがあるんじゃないかって。
私と同じじゃないかって。
「ユズちゃんは、どんな字を書くの?」
少しおずおずと気まずそうに聞く彼女も、同じことを感じているのだろうか?
なんとなく、そんな気がしたんだ。
「サオトメは、5月の女。ユズは果実の柚に子供の子」
すると、彼女はその大きな瞳をぱちぱちさせて私の顔を見ていた。
「あ‥あの‥」
やっぱり、五月女の名前を出したから‥かな?
声をかけても反応がない。驚いてるのかな?
この子なら解ってくれるって、一瞬でも思った私が甘かった。
帰ろう。
この子に何かを言われたら、涙をこらえる自信がない。
真っ黒で真っ直ぐで
大きな瞳が全てを見透かしてしまう前に。
この場を立ち去ろう。
そう思って、足に動けって指令を出した時だった。
「可愛いねぇ!」
……え?
「柚子って、可愛い名前だねっ」
ニッコリと美しく笑いながら首を傾げる彼女は、私のことを、軽蔑や敬いや媚の瞳で見ていない。
「5月の女って書くんだぁ。私、5月生まれなんだよっ。おんなじだねっ」
それが、どんなに嬉しいことだったか。
「わわっどうしたの!? 泣かないでっ」
私は、ついにこらえることが出来なくて。
「ぅ‥うぅ。--っく、‥っく--‥
うわぁぁーん、うぁああぁん--っずび‥」
「わわっわっわ!」
差し出してくれた猫の絵のタオルハンカチを目に押し当てながら、小さな子供みたいに大声出して泣いた。
初めて人前で泣いて
初めて友達になりたいって思える人に逢えた。
この子なら‥
この子なら、
きっと、解ってくれる。
ねぇ、こんな私でも
友達が欲しいと望んで
良いですか‥?

