片翼の天使

「黒姫~黒姫~? まーだ来てねぇのかヤツは」



頭を掻きながら呆れたように溜め息をついた担任は、ホストみたいに整った顔立ち。

まだ若そうなのに、学年主任なんだって。



「おー、座れー。よし、次! 五月女ーっ」



低い大きな声が教室内に響き渡ると、ほぼ全員が私へと顔を向ける。

カタンと静かに立ち上がり、おとなしく、おしとやかに‥“五月女”を演じる。


「五月女 柚子です。よろしくお願いします」



毎度毎度のかったるい自己紹介。

ニッコリと口角を上げて一礼すると--‥

ほら、始まった。



「え? サオトメって、あの?」

「そーだよ。何、知らねえの?」

「あの五月女グループのご令嬢と同じクラスってこと!?」

「かわいーねぇ。さすが五月女グループ」

「体育とかやりづらくない?」

「ってか、友達になっとかなきゃ」




ザワザワざわざわ
こそこそコソコソ




--‥耳障り。


いい加減、キレても良いかな?

もうウンザリなんだ。


なんで私は“五月女”なの?

お父様やお母様の仕事は好きよ?

でも、

“五月女”の名は、私には重すぎる。重すぎるんだよ……っ





ついに私は

“黙れっ!!”

そう言おうとして息を大きく吸い込んだ。



--‥その時だった。







ガラララーっバンっ!



「Aくらーすっ!! やぁっと着いたー」



美しい声で叫びながら、勢いよくドアを開けたのは……そう、あの子。