片翼の天使

めんどくさい入学式。

ご機嫌取りの取り巻きをあしらって、私はA組の列に並ぶ。

退屈な話ばかり。


でもね?

今回の入学式は、驚いたことに私の挨拶じゃない。

幼等部も初等部も、中等部も。

首席で入ってしまった私は、壇上で挨拶をさせられた。だから、この忌まわしい名前が広まるのも早かった。


今回の私は4席。
手を抜いたつもりはなかったんだけど‥ね。



「新入生代表挨拶、黒姫 魅」



し‥んーー‥



「A組、黒姫 魅っ」



次第にざわざわし始める体育館内。

みんながうちのクラスの列を見回すけど、お互いがお互いを見るだけで、誰も前へ出ようとしない。



「黒姫 魅~?」



そう言いながら、担任が前から歩いてくる。


ほんとにいないのかな? 入学式からいないってアリなの?

--‥ま、人のコト言えないんだけど。



「せんせー」



その時、担任を呼び止める為にひょこっと列から顔を出したその女の子。

みんなが一斉に後ろを向く。


サラサラの長い髪に、ほんっとに綺麗な顔立ち。女の私でさえもうっとりしてしまう程の器量だ。



「なんだ?」

「みぃ、来てないですよ?」

「なんで」

「んー‥寝てるか迷ってるかの可能性が大ですね」



--‥なんだその2択。



「ぷっ」

「くくくっ」

「くすくすくす」



あちこちから笑い声が聞こえてきた。

そうだよね。そんな理由で入学式に居ないとか、普通は有り得ないよ。



「では、次席が挨拶するって事でどうです?」



さっき紹介されていたこの学校の現生徒会長が、クツクツと楽しそうに喉を揺らして担任に話しかけた。


周りはたちまち黄色い歓声に変わり、ため息が出るほどに‥ウザイ。



「なんっで俺なんだよっ!!」



すると、やたら背の高い金髪の男の子が生徒会長に抗議を始めた。



「だってお前、次席だろ?」

「だからって‥っ」



ふぅん。見かけによらず、この人が次席‥ね。



はぁ‥

どーでも良い
めんどくさい
ウザすぎる

早く帰りたい



帰りたい?
帰ったって同じだよ。


つまらない。

この世界は、とてもつまらない。


ヒラヒラひらひら舞う桜。なんて美しいんだろう。

儚いからこそ、より美しいんだ--‥