片翼の天使

「五月女さん、うちの父がよろしくって」

「仲良くしてねっ五月女さん」

「五月女さんのお家って大きいですよねー」



どこに行っても五月女五月女五月女五月女五月女五月女五月女五月女五月女五月女--‥



うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさーーーいっっ!!



私が“五月女 柚子”である限り、必ずついて回るその忌まわしい名前。


嫌いだった。
大っ嫌いだった。


近づいてくる“友達”だと名乗る者は、ただの媚び売り。

私にとってはただウザイだけ。


幼等部の時からこの学校にいるけど、本当の友達なんかいない。

作ろうとも思わない。



そしてまた学校が変わって、今日は高校の入学式。


知らない人もいる。

でも、名乗ればすぐに判るだろう。


それくらい、この名前は大きいの。







--------‥







「柚子さまー! 柚子さまー?」


「なぁに? 寅じぃ。私ならここに居るよ?」



朝から騒がしく私を呼ぶ、私専属の執事。



「あぁ、良ぅございました。また入学式を欠席されるのではと、ご心配申し上げておりました」



あ‥中学の時はサボったからね。



「行くよ行く!」



寅じぃは、私のことをよく解ってる。

だからこそ、寅じぃのその、しわだらけの顔が心配そうに歪むのを見たくない。


そのしわ1本1本は、きっと、私が寅じぃにかけた心配の数‥なのかな。



「ふふ。良い高校生活になりますように‥」



そう言いながら開けてくれた、車のドア。

いつものように乗り込んで出発だ。



めんどくさい。

めんどくさい。

めんどくさい。



そんな感情しか、ない。