更に2年が経つ。
もうすぐ、蒼は居なくなる。
俺から離れていく。
俺は、また置いてきぼりだ。
--------‥
「ねぇ蒼、高校‥決めたの?」
「あぁ」
「住むとこも?」
「あぁ」
悲しくて、寂しかった。
「なぁコウ」
「ん? 何?」
鼻がずびってなりそうなのをこらえて、俺はにっこりと笑いながら振り向いた。
「俺、あいつを見つけるために音楽が強い高校に行く」
「……」
「可能性は低いかもしれないけど、あいつは‥唄ってたから」
蒼はあの時から、あの子しか見えてない。
「その学校の理事長を、タクの親父がやってんだ」
俺から離れていかないで--‥
「んで俺、タクの家に住むことになった。その学校の隣だし」
置いていかないで--‥
「でさ、今でも、あと2年経ってからでも良いんだけど‥」
溢れそうになる涙を、必死にこらえて、一生懸命に笑顔を作って。
「一緒に、来るか?」
「……え?」
ぼろぼろぼろぼろ落ちる涙は、止まることを知らなくて。
笑顔は崩れてぐちゃぐちゃになる。
そして、部屋中が水で埋まってしまうんじゃないかってくらい、大泣きしたんだ。
離れていかない。
置いてきぼりじゃない。
嬉しかった。
「行く。俺、行くよ!」
それから、全国でもかなりレベルが高いその高校に入る為に、俺はすっごい勉強したんだ。
本当は、奨学金を狙ってたけど‥1歩及ばず。
でも、その首席のオンナ、新入生代表挨拶をすっぽかしやがったんだ。
だから、生徒会長になっていたタクに、俺がムリヤリ挨拶を読まされた。
キャーキャー言われてうるさくて。
すでに出来ていた4王子ってのに加えられるハメになって。
不愉快極まりなくて。
会ったら、1発ぶん殴ってやろうと思ったんだ。
殴れなかったけどね。
むしろ、一緒に住むことになったし、好きになったけどね。
今の奥さんには悪いけど
俺、たぶん‥
一生、好きだ。
俺、この人生が終わって、次が廻ってきたって、君のこと‥忘れないよ。
--‥忘れない。