片翼の天使

「ふぅ。間に合ったね、蒼兄っ」

「おまっ、結局鳴らしたの俺じゃねぇか」



あはあはと笑っていた俺たち。

すごく寒かったけれど、高いところから見る雪景色はまた一段と綺麗だった。








‥‥----~~♪









「、っ!!!」



その時、いきなり後ろから口を塞がれ、俺は死ぬかと思った。

犯人はもちろん蒼だ。



「まみうんまもふごふご‥」

「しっ! 黙れコウっ!!」



いつになく真剣なその表情に、俺はシュン‥となりながら黙ってみる。

すると、聞こえてきた音。








‥ーーーー~~~♪









「歌‥?」

「あぁ」

「綺麗な声だね」

「……あぁ」



うっとりと聴き入ってしまうような歌声。


この銀色の世界に
溶けるような


高く

遠く


響く声。



美しく綺麗だけれど、どこか悲しい。




すると、辺りを見渡していた蒼がいきなり走り出した。


しばらく鼻と口を塞がれていた俺は、突然のことに対処できる酸素を持っていなくて、ふらりと壁に掴まる。



やっとのことで取り戻した酸素。

蒼がどこへ行ったのかと、壁の縁に掴まり背伸びをして辺りを見渡す。



「居たっ!!」



俺は、蒼の居た公園まで走った。



「蒼兄っ」



すると、

真っ黒い大きな瞳を真っ直ぐに蒼へと向けていた女の子。

その子は、真っ黒でふわふわした髪の毛を揺らしながら、くるりと背を向けて走り去ってしまったんだ。



「‥真っ黒で真っ白な女の子」



その日から、蒼はあの子の話ばかりをするようになった。






名前も知らない

真っ黒で真っ白な女の子。



まるで、

--‥片翼の天使。




蒼のココロの軸は、常にあの子で回るようになったんだ。