片翼の天使



「ごっ‥ごめんなさい‥」


申し訳なさいっぱいで、俯いてしまった。


急に代わりに挨拶って言われて、大変だったろうに‥


ヘンな歌まで聞かせて

傘まで一緒させてもらって

おまけに家まで送ってくれて‥



コウくん‥すいません。



「ふっ。はははっ
やっぱおもしれぇのな。いーっていーって!!
最初は殴るって決めてたけど?」




うわっやっぱり怒ってらっしゃる‥



「黒姫魅が魅で良かったわ」



‥ん?



「俺、なんか魅のこと気に入ったし。可愛いし。綺麗な声だし、おもしれぇしっ。ぷっ」



なんか‥とてつもなく恥ずかしいことをサラリと言ったコウくんは、また肩を揺らし始めた。



「あ、ここなの」



薄いピンクの外壁に紺の屋根。

2階建てのちっちゃなアパートに住んでいる私。



「可愛いね。魅って独り暮らし?」

「うん‥」

「そか。じゃー、今度は俺ん家こいよ。幼なじみ5人で住んでんだっ。


あ、でも魅は危ないか‥?」



車の通る音で、最後の方が聞き取れなかったの。



「何?」

「あ、いや、何でもない。じゃーまた明日なっ」



コウくんは可愛く笑いながら、元来た道を歩いていった。


もしかして、遠回りさせちゃったかな?


今日コウくんに会って

ちょっとだけ‥


ちょっとだけ



私の存在する理由を見つけた気がして、嬉しかった。