片翼の天使

「おぉ、おぉ、洸一朗がこんなになつくなんて珍しいなぁ」



朗らかに笑う神父様。

この兄ちゃんに出逢ったこの日。

俺は、ご飯も風呂もずっと一緒だった。


本を読んでいた兄ちゃんの横にぺったり座り、俺も絵本を広げる。

少しだけ書いてある文字を大きな声で読んでいると、



「これは“はすがき”じゃなくて“はみがき”って読むんだよ」



って、笑って教えてくれたんだ。


その光景を見てなのか、2人部屋のこの施設。俺の新しいルームメイトは、その兄ちゃんだった。



「よろしくな」

「はいっよろしくおねがいします」



ぺこりと頭を下げ、いつもみたいに挨拶をする。



「お前、名前は?」

「おれは、コウ!」

「コウ?」

「そ。洸一朗っていうんだ」

「歳は?」

「もうすぐ6歳になる!」



すると兄ちゃんは、ふっと綺麗な蒼を細めながら笑った。



「そっか。来年、小学校か」

「うん!」

「俺の名前は‥」

「ソウだろ?」

「ん? 誰かから聞いたのか?」

「うんっ。綺麗な銀の髪だって。おれの金とソウの銀で兄弟みたいだって」

「あははは、そうか」



兄ちゃんが、口を開けて笑う姿を見て、俺も“本物”の笑みがこぼれる。


俺の頭をぐしゃぐしゃとぐちゃぐちゃにした兄ちゃんは、その蒼い瞳で俺の瞳を真っ直ぐに見ながら……



「その笑顔が本物か」



そう言って、ふわりと笑ったんだ。



「俺の名前は、ソウ。あおって書いて蒼だ。8歳になる。よろしくな、コウ」



--‥嬉しかった。

蒼の言葉の1つ1つが嬉しかったんだ。



「お、おい、泣くなって」



俺はこの晩、いつまでも泣いていたのを覚えてる。