「やぁーだーぁぁ!!!!」

「仕方ないだろ?」

「いかないでよーっうぁぁんーうぁぁーっっ!!!」



冬が終わりを迎えるこの時期。


それは別れの季節。



「泣くなコウ。16歳になったらこの施設を出て行く。覚悟してた事だろ?」

「ぅ‥だって、っく‥にぃちゃん‥うぇ」



親を亡くした子や、親に捨てられた子が集まり、生活をするこの教会。

16歳になり、働ける年齢になると、高校の寮に入ったり就職したりして自立しなければならない。


それが、此処のルール。



「なぁコウ? これから先も、必ず別れはある」

「うっく‥ひぃっく」

「でも、もう会えなくなるわけじゃない。分かるな?」



俺が物心ついた時から側に居た、1番仲の良い兄ちゃんが……

ついに今日、ここを出て行く。



「離れていくことは確かに寂しいかもしれない。でもな? コウ、」



兄ちゃんは、その大きな身体をくの字に曲げて、まだ小さい俺の瞳を覗き込む。



「だからこそ、その次にくる“出逢い”を大切にしろ」

「‥っく、であい?」



そう言ってふんわりと優しく微笑んだ兄ちゃんは、俺に背を向けて歩いていく。



「やだ‥やだやだやだやだっやだぁぁぁあーっ!!!

うぁぁあんっぁぁぁあーっーーー‥!」





ひとり‥またひとりと旅立つ兄ちゃんや姉ちゃん。


また--‥ほらまた。



新しい出逢いなんていらない。

どうせまた、俺から離れて行くんだろ?




--だから笑って。


笑顔を作って。
壁を作って。


深く関わらなければ別れなんて辛くない。




でも、でも、


ねぇ、お願いだよ‥




もう誰も




俺から離れていかないで‥



俺を置いていかないで‥




お願いだよ……。