片翼の天使

寒さも厳しくなり、この都心にしては珍しく雪が積もった。


いまだにハラリハラリと落ちてくる雪に、かじかむ手をはぁーってするけど意味はない。



もう2月。
受験生は忙しくって、うるさいアイツともあまり会えなくなった。

いつの間にか付き合ってることになってたみたい。


ま、馬鹿はキライじゃないけど。



今日も私は“友達”に、後ろ手でさよならの挨拶をして帰る。

いつもと同じ帰り道。


ただ違うのは、一面が銀色に染まったこの世界。


あぁ綺麗だな‥って、久しぶりに出てきた感情だった。



キキィーッッ!!
ボスンッッ!!



穏やかに流れていたこの時に、いきなり聞こえた車のスリップ音と、何かに衝突する音。


「あっぶね!雪だるまのおかげで助かったぜ‥」


そう言い残してまた走り出した車の運転手。

慣れない雪にスリップして、歩道にあったいくつかの雪だるまをなぎ倒して、なんとか無事だったらしいその男。



よかったぁ。
目の前で事故とか嫌だもんね。


その場を通り過ぎようとした私の横を、ふわっとした真っ黒な髪の女の子が追い抜いた。



あ‥黒姫 魅--‥



一瞬にして目を奪われてしまうって、よく考えたら恐ろしいこと‥だよね?



黒姫魅は歩道にしゃがみ、雪の塊を雪の塊に乗せてポンポンと叩いていた。

それは、崩れてしまった雪だるまたち。


小さいのから順番に、乗せて叩いて、乗せて叩いてを繰り返していたんだ。



でも、最後の一個。

一番大きな雪だるま。
きっと小さな子供くらいある、大きな大きな雪だるま。


頭が持ち上がらないみたい。

見かねた私は手を出した。



「せーので上げるよ? せー‥のっ!」



ポンポンポンポン叩いて整えて、元に戻った雪だるま。

ちょっと感動したよ。

この子‥根は優しいんじゃないかなぁ?


「ありがと」


真っ黒で真っ暗な瞳で、表情のない綺麗な顔で、お礼を言われた。


ボタ‥ボタボタボタズルッドシャー‥



なんでかな?
木から雪が大量に降ってきたよ。

その所為でコートもマフラーも意味がないくらいびちょびちょ。


「あー‥冷たい‥」


って私がうなだれてると、


「うち、来る?」


ふふっと少しだけ笑いながら、私を誘ってくれた、黒姫魅。


なんだか、ほかほかと嬉しくなった。