ちょっと広めのこの屋上。

ぐるりと囲む緑色のフェンス。

このフェンスの西側は、南京錠でいっぱいだ。

好きな相手の靴箱の鍵をここに付けて祈れば、両想いになれるんだって。

どこにでもありそうなジンクスだよね?


そのジンクスのせいで、私は3回も南京錠を買いましたが?

付ければ盗られるし、付けなければ手紙の雪崩。



めんどくさい‥。





「ーー‥聞いてる?」


「ん?あぁ、聞いてなかった」


「はは。そーいうとこも好きだよ」



そうだった。
この男に呼ばれてわざわざ来たんだった。



「で、話の続きなんだけど‥俺と付き合ってくれない?」


「嫌」



私は、そう一言だけ残して去った。

冷たい?

だって、ハッキリ言ってあげなきゃ可哀想でしょ?



「あ、優花おかえりー」


「ねぇねぇ、どうした?」


「あ?」


「あ?じゃなくて、告られたんでしょ?」


「あぁ。嫌って言った」


『えーーっ!!!』
『っしゃぁ!!!』



は?

それを聞いてきた友達だけじゃなくて、クラス中‥いや、廊下の連中まで叫んだもんだから、少しびっくりした。


女は悲鳴。
男は気合い。


なんなんだよもう‥



「もったいなぁい」


「付き合ってみれば良かったのに」


「はは。そうかもね」



みんな、あちらこちらで好き勝手に言ってる。


その空間がたまらなく嫌で、私は鞄を掴み、教室を出る。



「じゃーねー優花ぁ」


「また明日ねぇー」



そんなことを言う友達に、後ろ手で挨拶をした。


今日も1日お疲れ様っていう、色んな意味を込めて。








ーーーーーーーー‥








玄関まで降りて、靴箱を開ける。


バサバサバサバサ‥



はぁー‥


もう、出るのはため息ばっかり。


これを拾うのもめんどくさい。


鍵‥また付けようかな。



しばらく、靴箱の扉を開けたままの態勢で止まってた私。


すると、スッと伸びてきた白くて細い、綺麗な腕。



「はい」



凛と空気に響くような、美しい声。



「いらないの?」



ふっとその人の方へと顔を向けると‥



「ここ置いとくよ」



ふわふわした、
緑光りするくらいの真っ黒な髪の毛。

整った綺麗な顔立ち。


私は、見惚れてたんだ。