「おはよー優花」


「あ、おはよ」



春の気配が残る、
5月の半ば。

中学に入ってから、もう1ヶ月。

真新しい制服を毎朝着ることにも慣れ始めた頃だった。



「ねぇ優花、部活決めた?」


「いや、私はいいや。帰宅部で」



1年のクラスは8つもあって、きっと3年間1度も逢わない人も居るんだろうな。



「もったいないよぉ」


「そーだよ。優花は運動神経いいし」


「羨ましいよねー」



それなりに友達もできた。

でもーー‥



「あ、ねぇねぇ」


「なに?」


「アイツ、優花のこと好きらしいんだよね」


「うそー!」


「ほんとに?」


「優花ってやっぱ可愛いし、モテるんだ」



私、冷めてるってよく言われる。

それは、こういうガールズトークに興味がない所為かも。



「へー」


「やだ優花ってば」


「ほんっとクールだよねぇ」



どーでも良い。
同年代の男なんて、ただのガキだ。

それに、女も。



「おーい優花ぁーご指名だぞー」



そう馴れ馴れしく私を呼んだのは、同じクラスのジャガイモ。

ふと廊下側の扉に目をやると、茶髪の色黒男が立っていた。



「え?あれってもしかして‥」


「だよねぇ!!私も思った!!!」


「誰?」


「優花っ知らないの!?」



知らんよ。興味ないんだもん。



「学年一のモテ男」


「そーそー。入学してから1ヶ月で何人から告られてんだよってハナシ」


「へー‥」


「ま、優花も何人目だよって感じだけどね?」



そーなんだよ。
めんどくさいなぁ。

重い腰を上げてしぶしぶ扉まで行くと、屋上についてこいって。


私は、ため息をひとつ、わざとらしく落として後に続いた。



去り際の我がクラスのお祭り騒ぎは、屋上へ繋がる階段まで聞こえてたよ。