片翼の天使




「みーお姉ちゃんに会いたいですっ」



突然 叫んだコイツ。

頼む。

遠近感っつーのを誰かコイツに教えてやってくれ‥。



「泣き虫おにーちゃんは、みーお姉ちゃんを知ってますか?」



首をかしげて俺の顔を覗き込んだコイツ。

っつか、泣き虫は余計だって。



「あぁ、知ってるよ。とても良く‥知ってる」



素直に“知ってる”って言葉が出てきたのは、このちっこい太陽の魔法‥かな。



「みーお姉ちゃんはぁ、このお家に居るんです♪」




「ーー‥この家には……居ねぇよ」

「なんで?」

「居ねぇんだ‥」

「なんで?」



ーーーーーー‥っ



コイツはちびっ子だからーー‥

言葉がストレートに胸へ刺さって困る。



「俺が‥悪りぃんだ」

「なんで?」

「アイツは、ここに居ねぇ方がいいんだよーー‥」

「なんで?」

「俺は、アイツを傷つけちまうから‥」

「なんで?」

「はは。困ったな」



コイツの真っ直ぐな質問責めに、俺はチカラなく笑うしかなくてーー‥




「ここに居るって‥っ‥言ったもん」

「‥あぁ」

「また一緒に遊ぼって言ったもん‥っ」

「あぁ」

「“そう”とも遊ぶんだもん‥っ!!」

「ーー‥え‥と」

「みーお姉ちゃんっ‥に、おせんべっあげるんだもん‥っく」



またゆらゆらと揺れ始めた真っ黒な瞳。



「お前はよく泣くなぁ‥」



真っ黒で柔らかい頭を撫でながら、俺が想うのは“アイツ”のことなわけで‥。





求めたい‥

求めてはいけない‥



相反する2つの感情は、双曲線を描いて


そして‥



ーーー‥‥でも‥





さわさわと木々が話し始めていた。

燃えるような茜色を残すデカい太陽は、だんだんと傾いてるってさ。



そして

アイツによく似た月が


もうすぐ顔を出すんだそうだーー‥




俺は‥どうしたい?