片翼の天使



ーーーーーー‥





夏の空は雲ひとつなく、蒼く澄み渡っているハズなのに。

雷が1撃、俺の中を通り抜けていった。


と同時に、何か抑えられない感情がフタを押し開けようとしている。



「お前‥この名前、どこで?」



するとコイツは、その太陽のような笑みを崩すことなく‥



「みーお姉ちゃんがずぅっと言ってたんですっ。

みーちゃんにはすぐわかったもんねっ♪

この“そう”って人が、みーお姉ちゃんの好きな人なんですよっ♪」



俺は、溢れそうになるこの感情を押し込めるのに必死で、言葉を出せずにいた。



抑えろ

抑えろっ

抑えろっ!



たとえアイツが俺へと歩く“覚悟”を決めようと、また俺がアイツを求めたら‥



求めてしまったらーー‥



ーー‥っ、




「んとですねぇ‥」



コイツは、少しおとなしい声で言葉を続けた。



「なんていうかですねぇ、」



顔を伏せていた俺は、再び顔をあげて

この、アイツによく似た真っ黒な瞳を見た。



「頭の黒い猫の鈴がチリンって鳴ると、みーお姉ちゃんは必ず“そう”って言ってたです。でも」

「で‥も?」



コイツのずっとキラキラしていた太陽のような笑顔は、なぜかだんだんと曇ってゆく。



「“そう”って言うと、悲しいお顔をするです‥。

みーちゃんも、とても悲しくなるです」



そう言いながら、だんだんとその大きな瞳が揺れていく。



コイツの真っ黒なデカい瞳から溢れてく水は、頬を伝い流れ落ちてゆく。



そして


俺の熱くなった頬にもなぜか‥

一筋の水が、流れ落ちていった。



雨‥かな?