片翼の天使


「ふふふふふふっ」

「みいる?」

「ふふふっ‥あっはははははははは」

「みいるっ!どした?頭がおかしくなったか!?」

「あはっあはっはっお腹っいたいーーあはははははははは」

「みいるっ」

「フォルテ、これで良いんですよ。これで」

「あはははははははっははひはははは」




ーーーーーーーー‥





「あう‥ひっく‥ひっく‥ゔー」

「笑い終わったと思ったら今度はしゃっくりかよー」

「今、お水を持って来ますね」

「おもしれーな。みいるって」



何かの糸がプツンと切れた音がしたんだ。

そしたら笑いが止まらなくって‥。

自分でも、おかしくなったかと思ったよ。


いつもいつもココロにフタをして

感情をなかったことにして

全てから逃げていた私。


もっと早く、こうやって笑い転げることが出来ていたら‥


あなたを傷つけずに済んだのかな?



「好きなんだ?」

「え?」

「今、考えてるヤツのこと」



そう聞いたフォルテくんは、優しく、そして切なそうな瞳をしていた。



「うん」



私は、“あなた”を愛しています。



「そっか‥」



うつむいてしまったその蒼いグレーの瞳は、少し‥ゆらゆらしていた気がする。



「“その人”はね、フォルテくんと同じ、蒼みががった銀色の髪の毛でね、」

「うん」

「瞳の色も似てる」

「うん」

「“あの人”も両親がいなくって、教会で育ったんだって」

「ーー同じ‥」



フォルテくんは、私に少し驚いた顔を見せてくれた。



「ん。でね、私たちは小さい時に1度、会ったことがあったの。

お母さんが天使になった日‥私が6歳の時。“あの人”は、8歳。今のフォルテくんと同じ歳だね」



フォルテくんは、黙って頷きながら私を見ていた。



「名前も何も知らなかったけど、“あの人”は“私”をずっとずっと探していてくれた」

「ずっと?」

「うん、ずっと」

「長いね」

「うん。長いね‥
ずっとずーっと愛してくれてたのに‥」



信じてあげられなかったーー‥


“あのキス”には、意味があるって……


ただただ自分を守る為に記憶を手放し、

“あの人”を


傷つけたーー‥