片翼の天使

「またここに居たのかい?」



振り向くと、

沈みかけた夕陽に、頭がピカピカと光るおじいさんが立っていた。



「あの人が神父様だよ」



フォルテくんが静かに教えてくれた。



「え?あ‥こんにちは、神父様」

「おや、こんにちは。可愛い羊さん」



神父様は、穏やかに微笑んでいる。


なんだろ‥

この落ち着く感じ。



「神父様、みいるは猫だよ猫っ♪」



顔をキラキラさせながら、神父様にそう報告するフォルテくん。



「あっはっは。そうかそうか、猫か」




ーー‥びっくりしたぁ。


神父様って、意外に豪快に笑うんだ。




「みいる?おーい」



はっ!!



「あっははは♪みいるって面白いねっ!ははははははっっ」

「ふぉ‥フォルテくんっ!笑いすぎっ」



私って、笑われるコト多い‥よね?

ちょっと落ち込むなぁ。



「おやおや。この子が自分の名前を教えたのかい?」



神父様は、その細い瞳を見開いて私を見ていた。



「あー‥みいるだからな。日本人だし」



ひとしきり笑い終えたフォルテくんは、大人びた低い声を出した。




「そうかそうか」と、すごく嬉しそうに笑う神父様。

逆に、私に顔を見せてくれなくなったフォルテくん。



よく‥わかんないや。





気がつけば‥

蒼銀の月が顔を出し、たくさんの星が瞬いていた。



「あっ!帰らなきゃっ」

「どこに泊まってんの?送るよ」

「近くだから大丈夫だよ。たぶん‥」



歌につられてふらふらココまできたけど、そんな歩いてないと思うし。


第一、あんな豪邸を見逃す方がびっくりだよね?



「みいるさん、フォルテの申し出を受けてやってはくれないか?」



なんだか楽しそうに言う神父様。



「あ‥じゃあ、お願いします」

「よし。行こ!みいるっ」



フォルテくんは、私の手を取って歩き出した。



「みいるさん」



神父様が優しく私を呼び止める。



「はい」

「またおいでなさい。お話を、聞きますよ」



そう言いながら手を振る神父様。


なんだか‥全てを見透かされているような感じがした。




「みいる?」

「‥ん?」






「この家、門‥ドコ?」


あーー‥