「みいる?」
はっ
「大丈夫?」
私を心配そうに見つめる真っ直ぐな瞳。
心臓がぎゅってなって、フタが開いてしまいそう。
「震えてる‥」
胸の前で握りしめた私の両手に
そっと触れるフォルテくん。
「だい‥じょうぶ」
私はそう言いながら、長椅子に座った。
キラキラした夕陽が私たちを照らす。
学校の大聖堂より小さくて、結婚式を挙げるだけのようなこの教会に
2人の声がよく響いていた。
「髪の毛ふわふわだね。猫みたいだ」
フォルテくんは、私の髪の毛を楽しそうに撫でていた。
「なんで日本人がいるの?旅行?」
「あ、うん」
「ひとりで?」
「友達と‥3人で」
「ふぅーん」
なんだか楽しそうなフォルテくん。
ニコニコしてる。
似てる‥けど、
まったく違うタイプみたいーー‥
「悲しい?」
ーーーーー‥え?
「そんな瞳、してるから」
また瞳‥。
でも、そう言うフォルテくんは
どことなく
私に似ている気がした。
なんていうか‥
雰囲気が。
「俺は嬉しいよっ?久しぶりに日本語で話せて」
「あ‥そういえば、なんで日本語?」
「ああ、ここの神父様が日本マニアなわけ。
サムライだー、ノブナガだー、ジパングだーってよく言ってたぜ?」
全部‥現代じゃない気がしますが‥?
「みいるっていくつ?」
「へ?あ‥16歳。フォルテくんは?」
「ん~‥8歳かな。半分だね♪」
おぉ!
もっと大人に見えたよ。
落ち着いてるから‥かな?
ってか‥
「“かな”ってどういうコト?誕生日は?」
「あー‥俺、本当の誕生日しらないんだよね」
フォルテくんは、
とても寂しそうな顔を見せた。
「俺、両親いなくてさ。神父様に育ててもらったんだ」
あ……
「誕生日は12月24日だよ。神父様がくれたんだ♪」
そっか。似ていると感じるのはーーー‥
「私も、両親がいないんだ」
2人とも
同じ傷を持っているからーー‥。
ーーーーーー‥
ギィィーー‥
2人で時間を忘れて色んな話をしてた。
そんな時、
静かに、ゆっくりと教会の扉が開いてゆく。

