じんじんとする左の頬。
私を真っ直ぐに見つめる優花の瞳は、
さっきの柚子みたいに強く、そして清らかだった。
「みぃ‥逃げちゃダメ。それは、その答えは、本当の気持ちなの?」
本当の‥気持ち?
「銀崎先輩の瞳を見た?」
私はコクリと頷く。
「あんた今、同じ瞳をしてるんだよ」
ーーーー‥え?
「真っ暗で光なんて通す隙間もなくて、今にも泣き出してしまいそうな瞳‥」
優花の瞳が揺れている。
「少し、距離を置いて考えなさい。
それが、私たちが言える精一杯の言葉だよ‥みぃ」
強く、強く抱き締められる私。
耳元で聞こえた優花の言葉‥。
胸がぎゅって苦しくなった。
さっききっちりフタをしたはずの感情が零れてしまいそうだよーーー‥
今の私には、優花の言葉が理解できなかった。
“今の私”には‥
「優花‥ありがとう」
私はぎゅっと優花を抱き締め返した。
初めて“愛”を持って殴られた私。
左側の頬がじんじんと熱い‥。
ふっと横を見ると、
拓弥さんに殴られて口の端に血が滲んでいる蒼と、瞳があった。
同じ瞳‥
私も、あんな悲しそうな瞳をしてるの?
手を伸ばしたら
すぐに届く距離なのに。
手を伸ばす、勇気が足りないーー‥
強く‥なりたい。
強くなって、あなたを傷つけないようになりたい。
守れるくらい強くなりたい。
そしたら‥
そしたら、
もう1度、
笑って手を伸ばしても良いですか?
愛しています‥
ーーーーー……蒼。