蒼と2人きりになった時、不思議と私は落ち着いていた。



「ごめん‥」



その蒼みがかった綺麗な瞳は、今はもう
光を失っている。


この人は、泣いているんだーー‥




彼の名前を呼びたくて

すごくすごく呼びたくてーー‥



そしたら、少しずつ

“声”が戻ってきたんだ。



「そ‥う」



やっと言えた、彼の名前。




信じるよ。
信じてるよ。



ちゃんと、伝わっていますか?







蒼の口から
蒼の言葉で

今まで疑問だったことの全てを教えてくれた。




ショックだったのも

傷ついたのも事実。





でも、

蒼がずっとずっと探していてくれたのは


蒼がずっとずっと愛していたのは



“私”だった。





嬉しかった。








でもーー‥




1度欠けた歯車は

いびつに回転するしかなくてーー‥



ついに止まってしまう。







君をそんな瞳にしたのは、私だから。


私が隣に居る限り、
君は私を重く感じるだろうから。






『別れよう』





そんな彼の言葉に


いつしか流れることをやめた瞳を向けて









「うん」








って、取り戻したばかりのその“声”で


私は微笑みながら、返事をした。









「ごめんね」


そして


「ありがとう」




その2つの言葉を彼に返した。








ねえ、私の言葉は
あなたに届いていますか?








こんなに大好きだってことも


こんなに愛しているということも








全部、あなたに届いていますか?








ーーーーーーーー‥








ずっとずっと探してた黒い猫、

蒼銀の狼は自らその手を離した。




真っ白な片翼になった蒼銀の狼、

黒い猫は自らその手を離した。






お互いがお互いを

愛していたから。







庭に咲いた向日葵は

だんだんと枯れてゆく。




不思議と2人とも

涙なんか出てこなくって



やっと顔をだした
満月の光に照らされながら、



ニコッと微笑む2人がいた。