傷つけたのは俺だ。
俺なんだーー‥
ーーーーーーー‥
「銀崎先輩!」
「蒼っ!!」
執事に案内された部屋。
ゆっくりとドアを開けると、
ベッドに並んで座っていた3人。
コウとちっちゃいのは驚いた顔をしたけど、すぐに部屋を出て行った。
「魅‥」
声をかけると、ゆっくりとこっちを向いた魅。
一筋の光も通さないような、真っ暗な瞳をした魅は、
嗚咽なんてせず、
ただただ人形のように静かに涙を流していた。
「ごめん‥」
ドアの横から、俺は動けなかった。
魅に近づくのが怖かった。
これ以上に、魅を傷つけてしまいそうだったから。
魅は顔を俺に向けたまま、何かをしゃべろうとしている。
「‥ーーーー」
俺は、こいつの声まで奪ってしまったんだ。
「‥ーーーーぅ」
ーー‥え?
「‥そーー‥う」
「お前‥声が‥」
「そ‥う」
俺の名前を‥呼んだ。
「しんじつ‥を、そう、の‥くちからきき‥たい」
やっとの思いで声を絞り出している様子の魅。
「‥わかった」
俺はベッドの横の椅子に座り、
魅を真っ直ぐに見据えた。
俺は全てを話した。
俺の言葉で。
魅を探し続けたこと
灰田を代わりにしてたこと
お前に出会えたこと
そして
あの夏祭りでのキスのこと
俺の言葉は、お前に届いているか?
こんなに大好きだってことも
こんなに愛しているということも
全部、お前に届いているか?
俺が隣にいる限り
きっとお前は傷つくから。
俺のカケラなんて
もう拾わなければ
よかったな?
お前は拾ってしまったから
また、その瞳に戻ったんだ。
俺は弱い。
俺の所為で
お前が傷つくとこなんか、
もう見たくない。
見たくないんだ‥。
「ーー‥魅?」
愛してる。
だからこそ、
俺はお前に告げるんだ。
「別れよう」