「な‥にすんのよっ!!」



パシンッ!



「いっ‥」



パシンッ!
パシンッ!!
パシンッ!!!



ビンタの応酬が続く。



「やめろっ2人ともっ」


間に入った彼の所為で、彼女に手が届かない。



「はぁはぁはぁ‥」

「はぁはぁはぁ…」

「みぃはねぇ、」

「‥は?」



「ずっとずっと苦しんできたのよ。

ずっと‥ずっーと。


誰にも言わず、ひとりでココロの奥に感情をしまい込んで」

「だから何?あたし達の方がよっぽど不幸よ」

「あの子が何をしたの?あの子自身は何もしていないのよ!

生まれ持った美しい容姿と、美しい声。それだけでしょ?」




「あの子は黒猫よ」

「黒猫?だから?

あの子が黒猫だとしたら、真っ白な翼を持った、天使の黒い猫だわっ」




「……」




「あの子はね、あんたみたいに人にぶつける事もせず、ただただずっと耐えてきたの。

あんたにわかる!?
自分の不幸をあの子の所為にし続けてきた、あんたに!!」



みぃが初めて笑顔を見せてくれた時から、私はあの子を守るって決めたの。



「あの子はやっと手に入れたのよ。居場所を、幸せを!!」



彼女は、ゆらりとその真っ黒な瞳を揺らしながら私を睨む。



「あの子は、私から全てを奪っていくわっ!!家族もっ

銀崎くんもっ!!」



彼女は、また私を殴ろうと手を高く振り上げ‥下ろす。



パシっ!



閉じてしまった瞼を開けると‥



「許してくれ‥」

「ーーーっ!!!

紅澤くんっ!」




会長が私に背を向けて立ちはだかっていた。



「お前を蒼に会わせたのは、俺達だ。

恨むなら、蒼や魅ちゃんじゃなくて俺達だろ?」



ゆっくりと柔らかく話す会長の声。


それは


どこか恐ろしく、
どこか悲しそうだった。




「あたしは昔からあの子が嫌いだった。

綺麗な顔、綺麗な声。

あの子は、あたしの存在すら知らなかったけどね‥」




彼女の瞳からはだんだんと怒りの色がなくなり、悲しみに揺れている。




「姉貴は、みーの身代わりだった。そりゃ似てるよ‥。俺等いとこだもん」




「ははっ‥。
やっぱキライよ。

あんな‥黒い猫」