片翼の天使

頭の痛みは強くなっていく一方で。

痛みの許容範囲をゆうに超えてしまいそう……。


少しだけいる一般のお客さんのザワザワした声も、

鳴り響く楽しそうな音楽も、


今は耳に入らない。




“蒼さん”



さっき見た映像で、私は確かにそう呼んでいた。


“あの人”の映像が頭の中に見える度に

きゅぅんってする
愛おしい気持ちと、

きゅぅんってする
悲しい気持ち。


相反した2つの感情が私を締め付ける。


なぜ?


私は“あの人”を好きだったはず。


なぜ悲しい気持ちが混ざるの?



ズキズキする頭を抱えながら、立ち止まっていた私。

痛みからか、

その悲しい気持ちからなのか、

いつしか私の瞳には涙がいっぱいたまっていた。


「みー‥?」



私の名前を呼びながら歩いて近づいてくる、黒髪の男の子。



『よーちゃん‥』

「なんでこんな所でひとりなわけ?オウジサマ達や美人さん達は?」



えっと‥



「迷子かぁ?みー、携帯は?」



携帯は、あ!
預けたまんまだ!



ズキンっ!!


痛っ




『携帯は巾着。巾着は、蒼に預けたまんまだ』




蒼‥

ーー‥蒼?




「みー?‥っ泣いてんのか?」



溢れ出てくるこの涙は、何を意味してるんだろう。

よーちゃんは強く、とても強く私を抱きしめた。


「忘れちまえよ」



ーー‥え?



「忘れちまえよ、あんなヤツ」



強い、強い口調。
怒ってる‥?



「もう思い出すな。お前が辛くなるだけだろ?」



つらい‥?



「‥俺にしろよ」



ーーーー‥?



「俺、みーが好きだ」



ーーーっ!?



「俺を見ろっ魅!」



強引に重ねられた唇。




ーーーーキス?






ふっと、2つのシルエットの唇が重なる。


い‥や‥




嫌っ!!





ドンっ





よーちゃんを力いっぱい突き飛ばしてしまった私。


よーちゃんは、よろよろと2・3歩後ろに下がった。




「みー‥」





よーちゃんが再び私に手を伸ばした時、



反対側の腕をガシッと掴んだ知らない女の人。



黒髪の‥女の人。






ズキン‥っ!!