片翼の天使


まだまだ明るい、
夏の夕刻。


大きな玄関の扉を開くと、誕生日に乗ったのと同じ車があった。

いつものようにドアを優雅に開ける寅じぃに、

いつものように


『ありがとうございます』


と言う。

声は聞こえないけれど、寅じぃは



「はい」



と笑顔で応え、車内へと誘導してくれた。


長っ!
広っ!



「みぃちゃん、あの日と同じ反応~」



って、くすくす笑う柚子。

うーん‥顔に出てたのかな?


中に入る順番も同じ。
座った場所も同じ。

でも‥



「僕、魅の隣にいこっ。こいつらうるせーんだもん」



颯斗が私の隣に座り、海斗と挟まれた。



「双子に挟まれちゃって。魅ちゃんがかわいそうだね」

「あー俺が座るのーっ!!」

「みぃちゃんの隣は、柚子って決まってるんだよぉ」

「やぁっぱ騒がしくなったか。みぃ、こっち来る?」

『だいじょうぶ』

「大丈夫だってさ、なっ海斗くん?」

「とーぜんだよなぁ。颯斗くん?」



あはははって爆笑するみんな。



えと‥、

気をつかわせちゃったんだよね?



私が、空いた右隣を見てたから。



みんなで爆笑になるのはいつもの事で、

不自然ではないけれど‥

自然でも‥ない。



初めての遊園地は
“8人”で行った。


今日は“7人”だけーー‥


“あの人”は、来ない。



「魅、今日は僕と観覧車なっ」



ニィって並びの良い歯を見せた颯斗。



『うん』



私は頷いた。



「魅は俺とシースルー乗るんだよっ♪ね?魅っ」

「えー!?みぃちゃんシースルー乗るのぉ?柚子もー!」



まだ言うか。
この童顔’sは。



みんなの笑い声が車内に響く。


楽しい♪




でも、


でもーー‥





ーーーーーーーー‥






空が

橙から紫‥

そして紺色へと変わる。





遊園地のアトラクションに乗りながら見上げた空は、薄雲り。


昨日はハッキリ綺麗に顔を見せていた月は、姿を隠していた。




でも


蒼銀の光をキラキラとためこんだ月は、


周りの群青色の薄雲を照らし、

その居場所をこっそりと‥

私に教えてくれていた。



まるで、

私の様子を伺うようにーーーー‥