片翼の天使

見慣れた玄関の扉を開けると、



「魅っ!!」



その少し高めの声と共に視界を塞がれ、ぎゅーっとされた。

く、苦し‥



「「おぃ、コウ!」」

「魅が苦しがってるって」



って言いながら笑ってる海斗と



「ぷっはははー‥」



もう最初から笑ってる颯斗。

「ごめんね?つい」



って謝るコウくんは、かわいかった。



「おかえり、魅ちゃん」


綺麗な笑顔で迎えてくれた拓弥さんに



『ただいまっ』



って言ったけれど、声は聞こえない。
ふっとみんなの瞳が曇ってしまった。

でも、だからこそ私は敢えて笑顔を見せる。


そして、自由帳に『遊園地に行くの』って書いた。


「お!いーねぇ」

「僕らも行く!」

子供のように手を挙げて意見を述べる、海斗と颯斗。


「今度はシースルーに乗ろうね♪」

って言うコウくんをまたしても丁重にお断りし、


「「ジェットコースターには乗らないからね」」



って声を揃えて拒否宣言をした拓弥さんと優花。



「ふっふふふふっ‥とりあえず、中に入れてください~」



って笑いながら言う柚子は「もう限界~」ってリビングのソファに座り込んだ。



「あ、冷たいもの用意するよ」

「タク~俺のも~」

「はいはい」



「お願いしま~す」って言いながら、私を隣に座らせるコウくん。



「「魅は何が良い?」」



ハモって私に話しかける海斗と颯斗に、ふふっと笑いながら


『冷たい牛乳を』

って書く。


それを読んだ優花は、くしゃっと私の頭を撫でて



「あっ会長、私も手伝います!」



と台所へついていった。



「柚子も~!」



そして柚子も。


左に居るコウくんが私の頭を撫でる。

私はニコッと笑ってコウくんを見た。

そしてそのままくるっと右を見た私。



ーーー‥居ない。



誰が‥?わからない。



すかすかした右側。



感じる違和感‥。


わからないー‥。



私、どうしちゃったんだろーー‥?


そんな戸惑う様子の私を、悲しそうに見ていた海斗や颯斗、そしてコウくんには

気付くハズもなく‥




庭の向日葵はもう、私より背が高い。

その花が眺めるのは


蒼く澄み渡った真夏の空。


私の大好きな大好きな“蒼い空”だった。