片翼の天使


自由帳に『わからない』って書くと、その蒼銀髪の人は悲しそうな顔をした。


なんだか、申し訳なく思った。

みんなの口ぶりだと、私は“この人”を良く知ってなきゃいけないみたい。


でも、

会ったことないもん。


ーー‥たぶん。


ふいに“その人”の手が伸びてきて、私は身体を引いた。


引いた?
なんで?


撫でられるのは好きなのに。


なんだか‥

触って欲しいような

触れられちゃイケナイようなーー‥


そんな‥変な感じ。



‥矛盾?



私が身体を引いたのが分かったのか、“その人”は、一瞬ピクッとなって手を戻す。


手を戻した“その人”は、その綺麗な蒼みがかった瞳に悲しみを溢れさせ、

そして

ふっ‥とうつむき、部屋を出て行った。



その背中を

追いかけなくちゃいけないような、

追いかけちゃいけないような、


やっぱり‥変な感じがする。



「みぃ?」



優花が静かに私を呼ぶ。



『ん?』

「明日、王子達の家に戻ってみよっか」



そう美しく微笑む優花の瞳は真っ赤だった。
そしてまだ、ゆらゆらと揺れていた。


私はこっくりと頷き、承諾の意を表す。


その時ーー‥



ぐぅ~きゅるるる‥



お腹が鳴った。


お腹は声が出るのかっ!!

ちょっぴり自分のお腹に感心してると、



「ぷっ‥はっはっははっはっははっはっはーー‥」



優花が笑い出す。



「あはははははー‥みぃちゃんったら」



柚子も笑い出す。



「あっはっはっはっはっはっははっはっはーー‥」



よーちゃんも

拓弥さんも

海斗も

颯斗も

コウくんも



そして私も。




みんなで爆笑になった。

お腹が壊れそうになるくらい笑った。


なるほど。
双子は、こうやって腹筋を鍛えてゆくのだ!!




でも




その時ふっと



違和感を覚えた。




なんていうかーー‥



低い音が、足りない気が‥したの。





すると




私の頭を撫でる、おっきな手が見えた。




ばっと右斜め後ろを見るけど、誰もいないーー‥




あなたはーー‥




ーー‥誰?