片翼の天使


8月の太陽が窓から覗いている。

でも

エアコンの冷ややかな風が頬や腕を撫でていた。




両の手のひらは、
ーーーあったかい‥





ふと瞳を開けると、見えるのは高い高い白い天井。



両の手元を見ると‥

優花と柚子が私の手を握りながら眠っていた。



『優花、柚子』



呼びかけても起きない。
私は2人の手を離さないように、そっと上半身を起き上がらせた。


点滴がいくつも私の腕に付いていて、規則的にポタポタと落ちる。




ーーーー点滴?








その時、


ガチャ‥っと音がして扉が開いた。

入ってきたのはーー‥




「みーっ!!!」


『よーちゃん』



彼はその真っ黒な瞳を大きく見開き、

そして

泣きそうなくらいに揺れていた。



「みぃ!」
「みぃちゃんっ!」



そううるさいくらいに叫んだ2人は、すごくすごくキラキラした笑い顔を見せてくれた。



『あ、起こしちゃった?ごめんね』



そう笑顔で言った時だった。



3人の瞳が一瞬にして曇り、その顔からは笑みが消えた。



『どうしたの?』

「ー‥っみぃ?」



今にも泣きそうな
優花。

今にも泣きそうな
柚子。

今にも泣きそうな‥
よーちゃん。



「みぃ、“優花”って、呼んで?」

『ーー‥優、花?』





「ひっく‥ひぃっく‥みぃちゃんっ!!みぃちゃーん!ーーうわぁぁん‥」



ついに泣き出してしまった柚子。



私は、柚子の頭を撫でながら『どうしたの?』と問う。



すると優花が不思議な質問をしてきた。



「みぃーー‥私たちの“声”は、聞こえてるのね?」


優花の頬を、一筋の涙が伝っていく。



「みー‥」


震えた声で私を呼ぶよーちゃん。




『どうしたの?』


私は、訳が解らなかった。

なんで泣いてるの?





「みー“自分の声”は聞こえるか?」





ーーーーー‥?





『あ、あ、あー』



あれ?



『あーあいうえお』



ーーーーー‥え?





ーーー聞こえない。




私の“声”が聞こえない!!



どういう‥コト?






ーーーーーーーー‥







「みぃ‥“声”を
失ったのね?」