タクから連絡があった。
“2人とも見つかったから、お前らは家に戻っててくれ”と。
それから、蒼と魅に何があったのかも。
この電話を僕にしたのは正解だ。
海斗なら五月女さん家に乗り込んでしまうだろうし、コウはフリーズするだろう。
実際、家に着いて着替えた後、言われた通りに話したら“そう”なったから。
もうすぐタクが蒼を連れて帰って来る。
ーーーーーーー‥
ガチャーー‥
静かに玄関の扉が開き、人が入って来る。
と同時にーー‥
ダァァンッ!!
「「海斗っ!!」」
ものすごい勢いで床に倒された蒼。海斗が馬乗りになって胸ぐらを掴んだ。
止めようとした僕とタクは、海斗の眼力に引き下がるしかなくて……
「どういうことだっ蒼っ!!説明しろ」
ほんとは解ってる。
灰田先輩を見つけたのは僕ら双子。
紹介したのはタクとコウ。
ーー共犯なんだ。
9年も昔話に捕らわれて華の高校生活を終わらせちゃうなんて、勿体無いって。
その昔話によく似た女を探した。
1年後‥本物が現れるなんて、誰も思ってなかったんだ。
「ーー‥んでだよ。なんでだよっ」
それが解ってるから、海斗は蒼の胸ぐらを揺すって床にたたきつけることしか出来なくてーー‥
海斗の気持ちと僕の気持ちがリンクする。
でも‥
今日は5人全員でリンクしてたと思う。
RRRRR‥
「はい‥ーーっ!!わかった。うん、ん、ごめんね。また‥何か変わったら連絡もらえるかな?……ありがとうー‥」
「タクっ魅は?」
電話が終わっても、携帯を見つめたままのタクに、僕は不安になった。
「意識が‥戻らないんだって」
「「ーーーーえ‥?」」
「見舞いには来るなって。あの2人は何でも知ってるからねっ」
そう言いながら無理して笑おうとする、その顔に‥
魅の容態の悪さに‥
見舞いを断られたことに‥
僕と海斗は涙が溢れた。
ダムが決壊し、止まる事を知らない涙は何を想って流れるのかーー‥
後悔?
怒り?
愛?
もう‥わからなかった。
タクもコウも蒼も、涙は出ていなくとも
その瞳は泣いていた。
リビングには、大声で泣く双子の声が
ずっとずっと響いていたんだ。