片翼の天使




「蒼ーっ!!」



銀崎先輩がいるの?
じゃあ何でここに来ないの?

何でみぃちゃんの元に来ないの!?



「柚子、みぃを頼む」



ゆーちゃんは会長を追いかけていった。



「っんでヤツがここに来てんだよ」



低く呟く彼に「どういうこと?」と問いかけながら、扉を開ける。



「お嬢さま!!」



門前での異常事態を察して、集まっていてくれた寅じぃ達。



「みぃちゃんを‥」

「承知しております。医者も呼んでありますので、お運びしましょう。

柚子様もお友達も、体をお拭き下さい」



渡された暖かいタオルで体を拭きながら、コウシマくんは話してくれた。



何も知らないみぃちゃんに、灰田先輩のことを話してしまったこと。


その直後に銀崎先輩と灰田先輩がキスをしていて、それをみぃちゃんが見てしまったことーー‥



灰田先輩のことは有名だった。銀崎先輩が初めて“彼女”を作った事で有名。


みぃちゃんに出会って、銀崎先輩の昔話を聞いてわかったんだ。


灰田先輩の容姿は、みぃちゃんに似てるーー‥


みぃちゃんに隠してるつもりはなかったの。

ただ“言わなくても良い”と思ってた。



銀崎先輩があまりにもみぃちゃんを大事にするから。

灰田先輩とはもう繋がってないんだと思ってた。


何なのっ!!!?


私の胸の中は、ムカムカが募っていた。

銀崎先輩‥許せないっ!



「五月女さん‥」



彼は下を向いていた顔を私に向けた。



ーーー‥ドキッ

真っ黒な瞳があまりにも綺麗で、みぃちゃんに初めて会った時を思い出した。



「みーを頼む」

「え?」

「俺の家には親父がいるから‥」

「あ……」



みぃちゃんを嫌ってるっていうあのーー‥



「頼む‥」

「ーー‥うん」



この人‥みぃちゃんのこと、すごく大切に思ってるんだ。





ーーーーーー‥





「柚子さま。魅さまの診察が終わりました」



寅じぃの声は低く、みぃちゃんの具合があまりよくない事を悟った。




バンっ!!




「柚子っ!!」



扉を勢い良く開けて入ってきたゆーちゃん。

その瞳は、すごくすごく真っ赤だった。



「ゆーちゃん、みぃちゃんのとこに行こうっ」