片翼の天使




30分くらい経っただろうか?

大雨の中、走って叫んでいたから、もう俺も2人も限界が近かった。



「はぁはぁ‥柚子ん家、すぐそこなの。増援を頼みに行こう!」

「はーぁ。だね。会長、柚子ん家に行きましょう」



颯斗からも海斗からもコウからも、見つからないって連絡しかない。

こんなに探しても見つからないなんて‥


どこに居るんだ。
魅ちゃん‥蒼ーー‥




ーーーーーーー‥





五月女家の門の近くまで行くと、門の前に人影が見えた。



「みぃっ!!」
「みぃちゃんっ!」



駆け寄る2人。

男に抱きかかえられてる女の子の、あの浴衣‥魅ちゃん!!



抱きかかえてる男はーー‥



「コウシマくん!みぃは?みぃはどうしたの!?どうしてーー‥」

「ゆーちゃんっ!!とりあえず中に入ろ?みぃちゃんが風邪ひいちゃうっ」



「会長も」って言葉に促されるように歩を進めた俺。



その時、ふと‥
ゆらりとした影を見たんだ。


見間違えるはずはない。



「蒼ーーっ!!」



俺は、走った。
そして、捕まえた蒼の浴衣の胸ぐらを掴んで問う。



「どういうことだ?説明しろっ!!何で魅ちゃんが“お前”じゃなくて“黄嶋”と居る?

何で魅ちゃんが気を失ってる!?答えろっ!!」



蒼を壁へと押し付け、一気にまくしたてる。



「灰田に会った‥」



灰田(ハイダ)‥

思い出話なんか忘れて、他の女にしろと俺たちが紹介した。


1番 真っ黒な髪で
1番 真っ黒な瞳。



あの時の女ーー‥



「別れる代償に最期のキスを求められた。それをアイツに見られたんだーー‥」



蒼は涙を流してはいない。

でも‥その美しい瞳は輝きを失い、空と共に泣いていた。



「今の話‥何ですか?」



振り向くと、瞳を大きく見開いて立ち尽くす美女。



「なんなんですかって聞いてるんです!

みぃはっ!みぃは‥やっと幸せになれたと思ったのに‥」



泣きじゃくる彼女は、蒼の胸を殴り続ける。



「なんでそんな女についてったんですかっ!
なんでそんな場面を見られるんですかっ!

あの子は、何も知らないのにっ!

何もー‥」



辺りには

彼女の泣き叫ぶ声だけが響きわたっていた‥。