あんなこと-ーっ
言うつもりじゃなかったんだ。
ただ、お前が「蒼」って呼ぶことに
イライラしたんだ。
こいつの美しい瞳が曇ってゆく。
マズいと思って手を引いた。
空は、こいつの心のように泣き始める。
-ーーーーーー‥
どう見たって、
“男”が“女”に
キスをしてた。
その独特の髪色。
こいつも、すぐに誰だか気づいたんだ。
「おいっみーっ!」
『魅っ』
なぜオマエがあいつを呼ぶ?
俺は目で先輩を牽制し、あいつを追う。
捕まえた時のあいつの瞳はーー‥
死んでいた。
ずっとずっと見てきたこいつのこの瞳。
闇を映したその瞳は
絶望の色
失望の色
昔よりも深く深く
光なんて一筋も通る隙間もないくらい。
そんな瞳を見ているのが辛くて……
俺は、こいつの顔を胸に押し付ける。
空は一層強く泣き始め、ふと見上げた先にはーー‥
アイツが立っていたんだ。
ズルッ‥
「!?みーっ?」
力が抜けて、崩れ落ちそうになるこいつ。
「みー?おいっ!」
頬をぺちぺち叩いても、反応がない。
ーー‥息はしてる。
俺は、こいつを抱き上げてその場を後にした。
ーーーーーーー‥
その時、
アイツがどんな瞳をしていたかなんて
興味はない。
空は飽きることなく
泣き続ける。