片翼の天使




「え‥忘れてたとか有りなの?」



って言いながら、声を抑えて笑ってる彼。


あー‥優花たち心配してるよね。



「お前、携帯は?」



ん?

携帯は‥巾着の中。


巾着はーーー‥



「蒼に預けたまんまだ‥」

「蒼?‥銀崎先輩だよね?」



彼の顔から急に笑みが消えた。

私は縦に首を振る。



「ふーん。“蒼”って呼んでんだ?」



私はまた首を縦に振ることしかできなかった。


急に彼の空気が変わったことに驚いたから。

でも何よりも‥


今は蒼を思い出したくなかった。


その想いで頭がフリーズし、言葉が出て来なかったんだ。




私はいつからこんなに嫌な子になったんだろうーー‥


蒼が他の女の人と居るだけで嫌。


あのお姉さんが蒼とどういう関係なのか確かめれば良いのに。


それだけなのにーー‥



それが出来ない自分が嫌。



胸の奥のズキンが、また大きくなった気がしたーー‥





ーーーーーーー‥




ふと見上げれば

いつの間にか雲で覆われた空。




今はただただ、



蒼と同じ色に輝くその月が



見えなくて
隠れていてくれて



ほっとしている自分がいたんだーー‥