片翼の天使





タクから聞いたんだ。
魅が俺の所為で倒れたって‥。


LHRを抜け出して保健室に来たのに‥

アイツは他の男の手で撫でられていた。



俺は無性に腹が立ってイライラした。



お前を『みー』って呼ぶこの男に殴りかかるとこだった。




なぁ魅?

『よーちゃん』ってなんだ?



聞きたい事がたくさんあった。

でも、無理に聞いちゃいけない気がした。



俺は“自分の印”をつけることしかできなくてーー‥



はは。
ガキだな。俺も‥




お前は気づいてんのかな?

昔の話をするときのその瞳。

怯えた捨て猫みたいなその瞳‥。

光がすうっと消えた真っ暗な瞳ーー‥




なぁ、お前はまだ

“片翼”なのか?




俺の翼ならいつだってお前にやるから。





ーーーーーー‥





左手を後ろへ差し出すと、小走りになってそれを捕まえるお前が可愛くて。


キスをすると、真っ赤になるお前が可愛くてーー‥




愛してるよ、魅。




ーーーーーーーー‥





闇に紛れる黒猫は、蒼銀の狼の腕の中。



月によく似たその色は、

暗い暗い夜道でも

黒猫が迷うことがないようにと

光の道標を差し伸べる。




黒猫はいつか

なんの迷いもなく

真っ白な翼を広げて

飛び立てる日が





来るのかなーー‥?