片翼の天使

「大丈夫?魅ちゃん」



拓弥さんが、その綺麗な顔を心配そうに歪めて覗き込む。

私は縦に首を振った。

よーちゃん。
いとこ‥だよね?

あのおじさんの息子さんが、こんな近くにーー‥


よーちゃん自身は大丈夫。

でも、よーちゃんはおじさんに似てる‥



カタカタカタカタ‥

また体が震えだす。



ぎゅ‥

私は抱き寄せられて蒼の胸に入った。



「どーいうコト?」

「タクはそいつを知ってんだ?」

「んー‥。魅ちゃん、話しても平気?」



拓弥さんが頭の後ろを優しく撫でる。

私はまた縦に1度、首を落とす。




ーーーーーーー‥




6歳で両親が亡くなったこと。

それから6年間は半1人暮らしだったこと。

お金の援助を、お母さんのお兄さんの“黄嶋”さんがしていたこと。

黄嶋のおじさんは私を毛嫌いしていたこと。


拓弥さんは、私を傷つけないように。慎重すぎるくらいに言葉を選びながら、少しずつみんなに説明してくれた。



「魅」



体を少し離して、その蒼みがかった瞳で私を見つめる。



「そいつに近づくな」



低く、何かを抑えるように言った蒼。



心配‥してくれてるの?


私はコクンと頷いて、蒼の胸にしがみついた。



「まぁ明日から夏休みだし?でも一応、五月女たちにも言っといた方が良いよな?」



コウくん‥。



「ん。優花と柚子には私から言うよ‥」



にこっと精一杯の笑顔で返した私。



すると何故か一斉に飛びかかって来た。

頭を撫でくりまわす海斗と颯斗に

蒼ごと抱きしめるコウくん。

拓弥さんも背中をポンポン叩いている。

蒼は一際強く私を抱き寄せ、こっそり唇にキスをしてきた。



そんなわきゃわきゃしてた保健室内。


鳴ってたチャイムなんか聞こえるはずもなく。



きっと拓弥さんが閉めたんであろうそのドアがまた開いてーー‥



「私のみぃに何やってるんですかっ!」



と、お母さん発言をして入ってきた優花。



「うわぁい♪けだものいっぱいだぁ♪」



と、顔に似合わない発言をしながら楽しそうな柚子。



ふふっ



「あーみぃちゃんが笑ってるぅ♪」



抱きつき組が増えましたっ。