片翼の天使

お庭ではバーベキューパーティーが行われていた。


全員が学年選抜メンバー。
しかも、1・2・3年生が勢揃い!

どっから見ても、すごい家族だ。


その中に入ってることが嬉しくって、顔がニヤニヤと緩んだ。




パーティーも一段落し、片付けに入る。

今日は2人、お手伝いさんが来ていた。

“拓弥様”って呼んでたから、拓弥さんのお手伝いさん‥?


拓弥さんのお家もお金持ちなのかな?



そんなことをぐるぐる考えながら、洗面台まで歩く私。


口の周りが汚いって笑われたの。



「はふぅ‥」



この後‥蒼と話せるかな?

その時ちゃんと伝えなくっちゃ!


鏡にうつる自分の瞳を見つめながら、決意を固めた私。



すると静かにドアが開いてく。

目を向けると、海斗が立っていた。


その瞳はあまりに

寂しそうで、
切なそうでーー‥



「海斗?」



ーー‥どうしたの?



「魅?」



海斗のその声は、いつもの明るいものではなく、

いつかの

“蒼が好きか”

と聞いてきたときの低い声だ。



「な‥に?」



ヘンに力が入って、うまく声が出ない。



「蒼に‥伝えた?」



ーーーー‥え?



「まだ‥か」



海斗は泣き出してしまいそうなくらい、その瞳をゆらゆらさせていた。



その瞬間

クンっと腕を引っ張られ、海斗の胸へとダイブする。



「かい‥と?」



背中と後頭部を固定されて、海斗の顔を見ることができなかった。


ぎゅ‥っと、その腕は強く、強く。



「海斗、くるし‥」

「なぁ、魅‥」



海斗は、またあの声で私を呼ぶ。



「俺、魅が好きだ」



ーー‥え?



更に強くなる海斗の腕‥



「好きなんだ‥」



海斗は真剣に私に伝えている。

だから私も、真剣に伝えなきゃいけない。



「かい‥と?私は‥」

「分かってる」



え‥?



「蒼が‥好きなんだろ?」

「ーー‥うん」

「分かってる‥」

「うんーー‥」



きっと海斗は、“あの時”から知ってたんだね?


「魅っーー‥」