片翼の天使




「あーー‥」



海斗は頭の後ろをポリポリと掻き、



「飯だ。早く来い」



と言い放って庭へと出て行った。


海斗から蒼へと視線を戻すと、じ‥っと私を見つめたままの、蒼い瞳に捕まった。


出鼻を挫かれた形の私は、なんか気恥ずかしくって‥



「な、何でもない」



ふぃっと、瞳をそらしてしまう。




ーーすると‥




ふわっと腰に手が回り、引き寄せられた。



うわっ‥



よろっとなりながら、私は座っている蒼の肩を掴む。






ーーーーー‥






‥蒼?



えと‥



顔が胸に当たってマスーー‥。




開いた長い脚の間にすっぽりと入り、ぎゅっと抱き締められる私。




ドキドキドキドキドキドキドキドキ‥



コンテストの時とは違う。

きゅぅんって体の真ん中が苦しくなるドキドキ。


胸に顔をつけてる蒼には、絶対に聞こえてる。



「また、あとでな」



きっと蒼は、

私が今、何を言いたかったのか‥


ーーー‥解ってる。



そんな感じの瞳だった。



待ってるって分かったら余計に


恥ずかしくって

顔も体も熱くなって

きゅぅんって苦しかった。



でも、


繋がれたその手に、ちょっと安心したんだ。



“また、あとでな”



またあとで、蒼とお話ができる。


そう考えたら、

ドキドキはウキウキになったかも。