ぶぉぉぉーー‥
走り出した車。
私は、寅じぃの後ろに乗ってる。
みぃちゃんは本当に良い子だ。
執事に“ありがとう”と“よろしく”を言う人、今までに見たことない。
私の周りはいつも、お礼なんて言わない人ばっかだもん。
私の顔色をうかがうような人ばっかだもん。
大企業の子供ってだけで特別扱い‥
もう慣れた。
もう飽きた。
そんな中学までの生活ーー‥
「良いお友達が出来ましたね。柚子様」
バックミラー越しに少し嬉しそうに笑顔を見せる寅じぃ。
「うんっ親友なんだからっ♪」
私も全開の笑顔になる。
ーーーーーー‥
あの日‥
桜が満開だった入学式。
式典が終わり、私のご機嫌取り達をあしらいながら教室に帰ろうとしていた。
そんなのが嫌で、
ふっと窓から外を見る。
目を奪われたのは‥
正面玄関にたたずむ、真っ黒な女の子。
ピンク色の桜を背景に、
ふわふわで真っ黒な髪と大きな真っ黒な瞳がとても絵になる女の子。
まだ、クラス分けの掲示板を見ていた。
するといきなりーー‥
「Aクラースっ!優花と一緒だーぁ」
って、綺麗な声で叫んだその子。
どうやら同じクラスらしい。
面白いコだなぁ。
ーーーーーーーー‥
それが最初だった。
みぃちゃんも、
ゆーちゃんも、
今までの人とは違う。
私のことを
“五月女”
じゃなくって
“柚子”
として見てくれる。
初めてできた、本当のお友達。
初めてできた、本物の親友。
「楽しそうですね、柚子様」
ふふっと笑いながら話しかける寅じぃ。
「ん♪楽しい」
今は、毎日が楽しいよっ
みぃちゃん、
ゆーちゃん、
だいすきだよぅっ!!