片翼の天使

ブァーーー‥


‥ポロロロロ‥ン


「あーーーー‥」


「じゃぁ、みんないけるぅ?」



それが始まりの合図。

4人で瞳を合わせてーー‥せーのっ



柚子のお家の音楽室。

大聖堂並みに広くて音が響く。


備え付けのパイプオルガンは、少し大聖堂のよりは小さいけど‥


いや。

音楽室があるだけでやっぱすごいよね?



「ふぁー。結構やったねぇ」



小さい体を大の字にして転がり、息を切らしてる柚子。



「私たち、選抜確定だわっ」



瞳がキランキランしてる優花。



「いやまじで王者もいけっかも。な、魅!」



うわー大変だー

すっごく楽しいぞ!



「さて、今日はこれくらいにするか」



優花が立ち上がり、パンパンっと手を叩く。

夏になりかけの空はもう紫色になっていた。


寅じぃの運転する車に乗るのは、もう何回目だろ?いつもありがとう。



‥って、今日こそ言おう。よし。



先に優花を降ろして
「また明日ね」とバイバイ。


私たちも門の前で降ろしてもらった。



「あ、寅じぃ‥さん」



呼ぶのは初めてだったので、「さん」付けにしてみた。



「寅じぃで、結構でございますよ?」



そう、シワの深い目尻を下げながら優しく笑う寅じぃは、やっぱり気品が漂っている。



「寅じぃ‥(さん)」



ちっちゃくさん付け。



「どうかされましたか?」

「あ、いつもありがとうございます!これからも、よろしくお願いします!」



私は直角以上に頭を下げた。

ん~‥なんか、恥ずかしかった。



頭をあげると、

柚子と寅じぃが瞳をまんまるにして、口をポカンと開けて、私を見ていた。



「ぷっ!ははははははははははははははははははははは‥」



爆笑を始めたのは、後ろにいたコウくん。


なんか変なこと言ったかな?



寅じぃはまた優しいあの顔に戻り、



「ありがとうございます。私の方こそ、よろしくお願い致します。」



と、深々と頭を下げ返した。



「みぃちゃん!」



ぎゅぅぅっと骨が折れちゃうんじゃないかってくらいに抱きしめられた身体。



「ありがとぉ。私達、これからも親友ねっ♪」



そう言って、柚子は帰っていった。

なんか、不思議な感じ‥?