幾日か経った朝。

私はまだ、蒼になんの返事もしていない。


もやもやうずうずとした私の心の中を映し出すように、

最近はどんよりと曇った空ばっかり。



「雨、降るかな?」

「70%」



「ほいっ」と傘を渡してくれたのは海斗。

こないだのすごく恐い感じは、次の日の朝ご飯の時には消えていた。

また、いつもの海斗だ。


ただ、前より優しくなった‥かな?



「海斗も早く行くの?」

「あぁ、音楽祭の練習だ」

「何やるの?」

「二胡」



ーー‥ニコ?



「弦が2本しかない中国の楽器だよ」



後ろから、頭をポンポンと叩かれた。



「あれ?颯斗も早いね?」



颯斗は最近、とても優しく笑う。



「海斗と一緒」



あ、一緒に二胡?をやるんだね?



「みんな傘持った?ってか魅ちゃん、カバン忘れてる!」



ーー‥はっ!!



「あ、ありがとうございます‥」



恥ずかしさのあまり、

拓弥さんへのお礼の言葉は、最後が聞こえなくなった。



「朝から面白れぇな」



私の頭に手を置いて靴を履いている蒼。



私は手置きかっ!



そんなツッコミを見透かしたかのように、くくっと喉を鳴らして笑った。



途端、右手を引っ張られて外に出る私。


犯人は‥

コウくん。




「魅、もう2人とも大聖堂に着いてるって!急ぐぞ!!」



早歩きだけど、久しぶりに6人揃って登校することが嬉しくて嬉しくって。

口元が緩みっぱなしだった。



今朝は早めだというのに、隣への道筋には女の子たち。

‥と、最近は男の子も少なからず混ざってる。


男の子も見惚れる程の、この5人‥

すごすぎだと思うわけであります。



この女の子たちは、この5人の内の誰かを

『好き』なのかな?


それって、どんな感じ?


1度、聞いてみたかったり‥。



「おはよ」



ひらひらと手を振る優花と、



「おっはよーぅ♪」



って朝からテンション高く抱きついてくる柚子。



「「おはよう」」



私とコウくんはそろって挨拶をすると、

4人と別れて大聖堂へと入った。