「あーーーーーーーーーーーーー」



意味なく声を出してみる。

お風呂の中で反響する、自分じゃないみたいな声。





『好きだ』





その言葉が頭の中をぐるぐるしている。



思い出しただけでも

心臓は早鐘を打ち、
お腹は苦しくなる。



「好き‥」



湯船に浸かり、ぶくぶくしながら外を眺める。


大きな窓から見える紺色の空。


雨がまた降っていたみたいで、庭が月明かりでキラキラと光っている。


猫の爪のように細かった月は確実に太り

今宵はもう‥満月に近い。






ーーーーーー‥





月を見上げる黒猫。


黒猫の瞳に映るのは



ーー‥月。




蒼く、銀色に光る月。




黒猫もまた

変わってゆく‥。