どんなに枕を殴っても、どんなにベッドを踏みつけても。

この、胸を覆うもやもやした苦しみからは解放されない。


俺はいつからこんなに弱くなった?

俺はいつからこんなに感情が溢れるようになった?



ーーーー‥っ



苦しい

苦しいっ

苦しいーー‥っ!



俺がーーっ

ーーー‥壊れてく。



その時、ドアの開く音がした。開け方で分かる。

来たのは蒼だ。


今、1番話したくない。


蒼はソファに腰をおろした。


一言も喋らない。

それが余計にイライラするーー‥っ



「海斗」



先に口を開いたのはむこう。



「…………」

「俺は、魅が好きだ」



知ってるよんなもんーー‥っ

ずっとずっとずっと
待ってたもんな。


伝えたんだろ?

良い返事がもらえそうなんだろ?

だからなんなんだよっ、放っておいてくれよ!!


‥頼むよーー‥



「海斗、お前は?」



ふっと顔を上げると

蒼特有の、吸い込まれそうな瞳が俺を射抜く。


蒼は、茶色の麻の布がかかったソファの真ん中に座り、

正面の俺を前のめりで見ていた。



端正な容姿

低く、綺麗な声

背はすらっと高く

仲間想いの蒼。



俺がかなうトコなんて‥1つもねぇ。

魅への想いだって‥



「お前の気持ちはそんなもんか」



‥は?



「魅が来てから変わったよ、お前」



何が言いてぇんだよ。



「笑うようになった」



「ーー‥っだから
なんだよっ!なんなんだよ!!

言いてぇ事があんならさっさと言えよ!」



蒼は、鋭い目つきでまた俺を見据えた。



そして




「魅が好きか?」



と、問う。



「ー‥っ!!


好きだよっ!

お前なんかより
ずっとずっとあいつが好きだっ!!!」



俺はまた蒼の胸ぐらを掴み、叫んだ。


すると蒼は、口の端を上げて薄く笑い、


「負けねえよ」と残して部屋を出て行った。



そうだ。

魅はまだ、誰が好きなのか言ってない。



それを聞くまで

俺は‥






俺は、諦めねぇ。