片翼の天使

ーー‥と言うわけで、

パイプオルガンの使用許可をもらうべく職員室へ来ました。



「あ?いーよ。自由に使え。メンテナンスは金成、出来るな?」

「はい。だぁいじょうぶっす」



コウくんがパイプオルガンを弾けるのは有名‥なのか?



「それにしても‥」



私の顔をじろじろまじまじと見る紫藤先生。



「‥なんでしょう?」



ちょっとだけ怖じ気づきながら伺うと、先生はニンマリと笑いながら、



「やっと唄う気になったか!黒姫魅よっ」



ほぇ?

両肩をバシバシと痛いくらいに叩きながら、満面の笑みを私に向ける。



「先生!みぃが唄えないコト知ってたの!?」



あーー‥


優花は“唄えない”って言った‥。


解って‥たんだ。

解ってくれてたんだねーー‥


えへへ。



「ちゃんと笑うようにもなったしな。もう大丈夫だろ。なっ?黒姫」



え‥と



「笑った顔は奏(カナデ)さんにそっくりだ」



そう言いながら先生は、私の頭をわしゃしゃってした。



ーー‥え?



「先生!お母さんのこと知ってるの!?」



お母さんの名前は

『黒姫 奏(クロキカナデ)』


私はお母さんに瓜二つ。



お母さんを

知ってるーー‥?



「ん?あぁ、俺の音楽の師だ」



ーーーー‥っ!!



お母さんの記憶。

お母さんの、あの温かい笑顔を知っている人。



ーー‥嬉しかった‥



とてもとても

嬉しかったの‥


先生は私の頭を優しく撫でて言った。



「奏さんは、お前に歌を辞めて欲しくて歌を教えたんじゃない。

唄い続けて欲しくて教えたんだ」



お母さん‥



「もう、飛べるだろう?」





ーーーー‥魅?


飛んでーー‥




「はいっ!」



視界が歪んでしまいそうだったけど、

零れ落ちてしまいそうだったけど、



私は、人生で1番良い顔で、笑っていただろうと思う。