片翼の天使




「「ふふっ」」



おでことおでこをくっつけて、お互いに笑う私たち。


私の心臓は穏やかに、
ゆったりと動いていた。


「魅、ずっとここに居て?」

「うん‥」

「離れて行かないで‥」
「‥うん」



なんか‥少しだけわかった気がする。


蒼とずっとずっと一緒だったコウくん。

私を特別な存在だと言ったコウくん。


そのトライアングルはね、きっと‥コウくんの中では

壊してはいけないもの。

崩してはいけないものなんだ。



コウくんは私と似てる。


真っ黒な猫が

真っ白な翼を求めるコトをためらったように。



金色の犬もまた

真っ白な翼を求めて
手を伸ばす。



でも、蒼銀の狼も

それに手を伸ばそうとしてるから、


金色の犬は、伸ばした手をどこにやれば良いのかーー‥わかんなくなっちゃったんだね?


私はーー‥



「‥ここに居るよ」



大きなあったかい手に

小さな冷たい手を重ねて、

子犬のように震えるそのおっきな体を抱きしめ返した。



ねぇ、

この穏やかな気持ちはなんだろう‥?



ふわふわしたこの優しい気持ちは何‥?




気が付いたら私は、そっ‥と降ってくる触れるだけの優しいキスをーー‥

何度も何度も受け入れていたーー‥





ーーーーーー‥






いつの間にか空は泣かなくなり、また‥月が顔を出している。


木々から流れて落ちる空の涙は、

そっと芽を出した向日葵の棚に集まる。


季節は、夏を迎えようとしていたーー‥