「俺と蒼は、孤児なんだ。教会で育った」



孤‥児?



「親の顔なんか知らない。俺らはいつもいつも一緒で、兄弟みたいだった」

「うん‥」

「銀と金の兄弟‥。俺らのこの髪は、地毛なんだよ?」

「そうなの?」

「うん。だから多分、2人共‥日本人じゃないね」



コウくんは、その色素の薄い大きな瞳を私に合わせて、ふっと笑った。



「いっぱいいっぱい辛かった。たくさんたくさん泣いた。」

「ーー‥うん」

「でもあの日、俺らは魅を見つけた」



ーー‥あの日‥



「俺らは、魅に翼をもらったんだ」



私が片翼を預かったあの日ーー‥



「だから、今日の俺らがある」



私‥も

誰かの役に立ててたの?


「あの日から魅は、特別な存在なんだ。また出逢えてーー‥良かった‥」



ふわっと笑ったコウくん。

いつものくしゃっでもなく、

さっきの悲しそうな瞳でもない。



優しい優しいその笑顔が、きっと‥


コウくんの

“本物”の笑顔‥


なんだね?




「俺と蒼は、ずっとずっと魅を探してた」



‥うん。



「魅があのとき歌を唄ってたから、俺らはこの、音楽の強い学校に入ったんだ」



私がここに入ったのは偶然。

初めて友達になった優花が、ここに入るって言ったからーー‥



「そしたら、あの日‥あの時と同じ歌が聞こえてきた」



あの日‥

たまたま先生に呼ばれて
たまたま雨が降り出して
たまたま親友は先に帰った。



そして、お母さんを思い出して唄ってたあの日ーー‥



もうそれは‥






「「運命」」





声が揃った2人。


呟いたように放った
その言葉は、


私が


俺が




存在する意味を


示しているような気がした。