片翼の天使

更に足をソファに乗せて私の体を挟んだコウくん。


コウくんはあったかくって、どきどきが‥速くなる。


背の高いコウくんにきゅってされてる私。

耳はコウくんの胸にあるわけで‥



「コウ‥くん?」

「‥ん?」



耳元でコウくんの高めの声がする。



「どきどきが‥私と同じ速さ、だね?」

「ん」



更にぎゅっと腕に力を入れるコウくん。

私は、そのふわふわした綺麗な金色の髪を梳いた。





ーーーーーー‥





「行かないで‥」



か細く

弱々しく

悲しそうに



「置いてかないで‥」



その声は、微かに震えていた。


湯船で眠ってる時も、そんなこと言ってたな‥。


「ここに‥居るよ」



コウくんは、またぎゅっと力を入れた。



「蒼のものになんかなっちゃ嫌だ」



‥え?



「なんかわかんねえけど、‥こう、もやもやするんだ。魅が蒼の隣に居るとき‥」



えとーー‥



「なんか俺‥独りで置いてかれてるような気がしてーー‥」



それは‥何の感情?



「10年前のあの日。都心にしては珍しく積もった雪‥

俺らは鐘を鳴らしに外へ出た。

そしたら、透明な歌が聞こえたんだ。


蒼は引き寄せられるように、魅の元へ歩いて行った‥」



ーーーー‥え?



過去が頭の中に蘇る。





ーーーーーー‥





真っ白な一面の雪。


私の歌声しか響かない、静かな公園。



近づいてくる足跡。






ーーーーーー‥





『いつか、ぼくのためにうたってね‥


いつか、この歌が
ぼく達を導くから‥



キミにぼくの片翼を預ける。


だから‥いつか返しに来てね?



‥忘れないで‥』




ガーン‥ゴーン…






ーーーーーー‥






覚えてるーー‥


あの子の言葉も


教会の鐘の音も‥





あの子は‥


あの男の子はーー‥




ーーー‥蒼?