片翼の天使



「そか‥」



コウくんはふっと視線を落とし、体の向きを変えて2つのカップを見つめた。



「魅はすげぇな」

「‥え?」



すごい?私‥が?



「魅に出会ってまだ半月くらい?」

「‥うん。たぶん」

「はは、短いよな。なのに‥みんな変わっていくーー‥」



遠くを見つめるような色素の薄い大きな瞳。


それが讃えるのは、

“何の”感情なのか。


私にはわからなかった。



「まず双子な?」

「海斗と颯斗?」

「そ。あいつらはあんなに笑うキャラじゃなかったし」




ーーーー‥あ。



『みぃの言うみたいに、笑ってるトコなんて見たことないなぁ~‥』

『私もぉ。みぃちゃんズルいぞっ』






ーーーーーー‥






優花たちもそう言ってたかも。



「でも、初対面で爆笑されたよ?」

「あはっ。そうなんだ?でもそれは、“魅”だったからだと思うよ?

あいつらは確実に、優しくなった‥」



そう言って微笑むコウくんは、また私の解らない所で話すわけでーー‥



「あいつらがあんな風に素直に笑えるようになれたのは、魅のお陰ってコトだよ」

「ーー‥どういう‥コト?」

「ん。今はわかんなくて良い。ありがとな」



コウくんの長い腕がすっと伸びてきたかと思うと、私の頭をなでなでし始めた。



「タクも変わった。いや、変わり始めてる」

「え、と‥?」

「ま、その内わかるよ。タクには一定の感情しかなかったんだ。

でもほらっ。風呂ん時の焦りようったら‥くっくっ」



肩を揺らし始めたコウくん。


みんなのことを話してくれるコウくんは、なんか楽しそうだった。



「みんな、仲が良いんだねっ」



なんだか私まで嬉しくなって、笑顔で発した言葉。



すると、コウくんは急に


真剣な顔つきで

真剣な眼差しで



私を見据えて言ったんだ‥。




「魅‥蒼が好きか?」




ーー‥え?