夏休み後に行われる“音楽祭”の為、生徒会長な俺は今から忙しい。


音楽祭ってのは、他の学校でいう所の文化祭みたいなもんだな。


エスカレーターで進学が決まってる俺は、なかなか生徒会から解放してもらえない。


蒼も進学が決まってるから、また手伝わせるかなー。



それより‥



「何があった?」

「「え゛‥」」

「何か聞きたい事があんだろ?」



明らかにおかしい双子の様子。

まぁ、だいたい察しはついてるけど‥



「‥魅ちゃんか?」



双子は揃って首を縦に動かす。

先に口を開いたのは颯斗だ。



「なぁタク。タクは、魅のこと‥どう思ってる?」



珍しく真面目な颯斗。

その瞳、その態度は真剣そのものだ。


海斗はそっぽを向いて、ソファーの上であぐらをかいている。

心なしか、少し震えてる気がするな。



「好きだよ」



これは俺の正直な気持ち。



「魅が蒼の探してた女の子でもか?」



素早く振り返った海斗の瞳は、今にも泣き出しそうだった。



そうだーー‥
ずっとずっと探してた。


もう10年も前だ。

もう絶対会えないと思ってた。

もう‥諦めさせようと、4人で色々と頑張った。


でもーー‥

出会ってしまったんだ。


蒼だけじゃない。

“俺ら”も出会った。



蒼から毎日のように聞かされ続けた

“あの”女の子を、



こんなに‥


こんなに、



愛おしく愛おしく
想うなんてーー‥




「あぁ、関係ないね。俺は魅ちゃんが好きだ。

魅ちゃんはまだ、
蒼が好きかどうか分かってない。


まだ諦めるには早いよ。」



主に“海斗”に向けて放った言葉。


こいつは、諦めるか否かで迷ってんだろう‥。

昔からわかりやすいやつだからな。



颯斗は多分‥

魅ちゃんを愛してはいるが、海斗の方を取ろうとしている。



こいつは俺に似てるからーー‥。



颯斗にとっての海斗は、俺にとっての蒼だ。



俺もまた‥

蒼を取ろうとしてんのかなーー‥



その時



トントントンと

誰か階段を降りてきた。