言ってしまった。

名前。

似合わないとか、思ってんだろうな……。



「ぴったりじゃん」

「ほえ?」



そう言ってくれたのは弟。

意外な言葉に、今度は私が目をパチクリさせた。



「綺麗な名前だな、魅」



兄まで。


ーー‥嬉しかった。

自己紹介する度に憂鬱になってた私。


お母さんが他界してから、もう10年。

お父さんはいない。



お母さんは毎日毎日

『魅』

って呼んでくれた。



その声が大好きだった。



今日、久しぶりに良い名前だなと思えた。



「えへへ」



私は照れ笑い。

すると、2人の顔が少し赤くなった気がした。



キーンコーンカーンコーン‥



わっ!

昼休み突入!!


今日こそ優花(ユウカ)と柚子(ユズ)とご飯食べないとっ

後が怖いもん。



優花は中学からの友達。

超がつくほどの美人で、大人っぽい。


柚子は身長150,4cmのおちびちゃん。

本人曰わく、コンマ4が大事だとか。細くて童顔で可愛くて妹みたい。



「じゃ、私お昼いくので」



私は立ち上がり、扉の前で振り返って‥



「あ、盗み聞きしてないですからね?橙向先輩と橙向先輩っ」



優花たちが怖い。
私は、全速力で教室へと走った。