-ガチャン 「お母さん、ただいまー。海波も帰って来たよ。」 靴を脱いでいる姉を背に、あたしは部屋へ戻ろうとする。 「海波。ちゃんとお母さんと話そう。寂しいじゃない、家族なんだもの。」 海咲ねぇの言葉を聞き流し、そのまま階段を上る。 「海咲、おかえり。 海波!お母さんに言うことあるでしょう?」 お母さんが、海咲ねぇの声を聞いて、リビングから出て来た。 「何にもない。」 あたしは振り向くことなく、部屋に入った。 お母さんと海咲ねぇの声も聞かずに。