…なんかあったかな。

眉間にシワを寄せて困った顔してるとーやクン。





「どうしたの?」

「あー…これから仕事だって」





苦笑いのとーやクンが。

自身の下唇に指先で触れる。





「…雨もあがってきたし、行くかな」





とーやクンの言葉どおり。

雨音は遠ざかり。

フロントガラス越しに見える向こう側も。

クリアになっていた。





「雨宿り、させてくれてありがとね」

「こっちこそ。…ゴハンごちそうさまでした」





とーやクンの外に向けていた視線がこっちを向いた。





「…雨上がりだし気を付けて帰るんだよ」





ガチャ。

助手席のドアが開く音がして。

風が“スウッ”と車の中に入ってきた。





その風が。

とーやクンとの時間の終わりを告げた。





とーやクンは“バタン”とドアを閉めると。

片手を挙げて歩きだした。