後頭部を引き寄せた手に力が入り。
唇をなぞっていた舌が。
ほんの少し開いた隙間からこちらへ侵入しようとした。
その時。
「…“ココ”じゃダメだ…」
そう小さく呟いて唇を離し。
私から視線を外した。
離された唇が熱かったからそう感じるのか。
触れる空気がヒンヤリする。
唇に寂しさと心地よさを感じながら。
私は俯いた。
“好きだからしたくなる”
そう言ったよね?
じゃあなんで。
この流れで。
するのを止めたの?
…私だって同じなんだよ。
“好きだから”
離してほしくなかったんだよ…。
ギュッ。
不意に感じた右手を握られる感覚に慌てて顔を上げると。
その先には。
ハンドルを握り。
車を走らせようとしているとーやクンがいた。

